【開催レポート】第33回 キャリア・コロッキアム 「地方圏における外国人の状況と地方圏への定着」
100年人生に向かう多様なキャリアとキャリア支援のあるべき姿について学び、互いに研鑽する場として当NPO法人が開催しているキャリア・コロキアム。
第33回は、2026年8月3日(月)19:00~20:40に、Zoomによるオンライン形式で開催されました。
今回は16名が参加し、地方圏における外国人住民の増加と地域への定着、共生社会を実現するための課題について活発な議論が行われました。
第1部「地方圏における外国人の状況と地方圏への定着」講演
第1部では、「地方圏における外国人の状況と地方圏への定着」と題し、大正大学地域創生学部教授の塚崎裕子氏による講演が行われました。
塚崎氏は厚生労働省など国の行政機関で勤務した後、大正大学に移り、地域構想研究所における自治体との連携調査や学生を伴った地方実習などを通じて、地方圏の外国人をめぐる問題を研究してこられました。全国平均だけでは捉えられない地域ごとの実態があるという問題意識から、地方という軸で外国人の居住、住民意識、地域への定着を分析していることが紹介されました。
講演は、①地方圏における外国人の状況、②地方圏集住市町村における外国人受入れに対する住民の意識、③外国人の地方圏への定着、の3つの内容で構成されました。
① 地方圏で加速する外国人住民の増加
最初に、日本に住む外国人数の推移が示されました。2025年末の在住外国人数は約412万5千人で、総人口に占める割合は3.35%となっています。リーマンショックや東日本大震災、コロナ禍の時期には一時的な減少が見られたものの、その後は増加に転じ、近年は従来よりも速いペースで増えています。
都道府県別では東京都が約80万人と最も多く、大阪府、愛知県、神奈川県、埼玉県などが続き、外国人は依然として三大都市圏に集中しています。地域圏別に見ると、日本人の約47%が地方圏に住んでいるのに対し、外国人の地方圏居住割合は約31%であり、日本人よりも都市部への集中度が高いことが分かります。
一方で、増加の勢いに注目すると異なる状況が見えてきます。2012年の外国人数を100とした場合、2025年には首都圏が214.3、地方圏が214.5となり、2023年以降は地方圏の増加率がわずかながら首都圏を上回っています。外国人の絶対数は都市部に多いものの、地方圏でも急速に外国人住民が増えていることが示されました。
さらに、市町村の人口規模別に外国人住民の割合を比較すると、すべての規模で2015年から2025年にかけて上昇していました。特に、人口3万人未満の市町村では、外国人住民の割合が2015年から2025年までの10年間で2.36倍となり、最も高い伸びを示しています。人口規模の小さな市町村では、外国人の増加が地域社会に与える影響や、住民が感じる変化も、実際の人数以上に大きくなる可能性が指摘されました。
在留資格別に見ると、小規模市町村ほど技能実習および特定技能の割合が高くなっています。人口3万人未満の市町村では、技能実習と特定技能を合わせると外国人住民の半数近くを占めており、農業や製造業などの人手不足が外国人の増加を牽引していることがうかがえます。
多様化する外国人集住市町村
続いて、住民に占める外国人の割合が5%以上である地方圏の集住市町村について、在留資格に基づく類型化が紹介されました。
塚崎氏は、調査対象となった56市町村を、次の4つに分類しました。
「身分過半」は、永住者、定住者、日本人の配偶者等といった身分に基づく在留資格を持つ外国人が、外国人住民の半数以上を占める市町村です。大規模な製造業の拠点を持ち、ブラジル人をはじめとする日系人が多く暮らす地域が中心となっています。
「専門最多」は、専門分野の在留資格を持つ外国人が最も多い市町村で、ニセコ町、白馬村、箱根町などの観光地が含まれています。宿泊業・飲食サービス業の割合が高く、オーストラリア、台湾、英国などの出身者が比較的多いことが特徴です。
「技能実習・特定技能最多」は、技能実習または特定技能の外国人が最も多い市町村で、農業を中心とする小規模な市町村が多く、ベトナム、インドネシア、中国などの出身者が多くなっています。
「混合」は、特定の在留資格が突出せず、さまざまな在留資格の外国人が暮らしている市町村です。
こうした類型を、外国人住民の割合が5%以上になった時期と照らし合わせると、「身分過半」以外の「専門最多」「技能実習・特定技能最多」「混合」は、主に直近10年の間に現れたことが明らかになりました。かつて外国人集住市町村といえば、製造業地域に暮らす日系人を中心とする地域が典型的でしたが、近年は観光業、人手不足分野、さまざまな国籍・在留資格を背景とする市町村へと多様化しています。
塚崎氏は、地方圏における外国人住民の状況が、これまでとは次元の異なる局面を迎えていると説明されました。
② 外国人との接点が住民意識に与える影響
講演の第2のテーマは、外国人集住市町村に住む日本人住民が、外国人の受入れについてどのような意識を持っているかという問題です。調査は、住民に占める外国人の割合が5%以上の地方圏59市町村を対象として行われ、うち56市町村に住む20代以上の住民1,194人から回答を得ています。調査時期は2023年10月から11月で、外国人との付き合いの有無や、今後の外国人受入れに対する考えなどが調査されました。
「地域に暮らしている外国人と付き合いがありますか」という質問に対して、「付き合いがある」と回答した人は16.2%にとどまり、83.8%は「付き合いがない」と回答しました。付き合いの内容としては、同じ職場で働いている、近所付き合いがある、友人として付き合っている、自治会や学校、趣味・スポーツの活動で一緒になる、といった関係が挙げられました。
「日本で暮らす外国人がこれからも増加してほしいと思いますか」という問いに対して、「そう思う」「どちらかというとそう思う」と答えた人は合わせて約21%でした。「そう思わない」「どちらかというとそう思わない」は合わせて約54%、「分からない」は約25%でした。
しかし、詳細な分析を行うと、外国人と仕事上の付き合いがある人、または仕事以外の付き合いがある人は、外国人の増加を否定したり、「分からない」と答えたりする確率が低く、受入れに肯定的な回答をする傾向があることが確認されました。
この結果について塚崎氏は、外国人との付き合いを通じて、漠然とした外国人ではなく、顔や生活、仕事を持った具体的な人として相手を知ることが、受入れに対する意識を肯定的なものに変える可能性を指摘しました。
住民意識には、市町村類型による違いも見られました。
外国人受入れに対する否定的な傾向は、「混合」が最も強く、次いで「身分過半」と「技能実習・特定技能最多」、「専門最多」の順でした。「専門最多」の住民は、外国人受入れに最も肯定的な傾向を示しました。
外国人が増加してほしくない理由としては、「治安が悪化するおそれ」「文化・生活習慣の違いによるトラブルのおそれ」「社会保障費や教育費の負担」などが多く挙げられました。雇用情勢や日本人の労働条件への影響を挙げる回答は、これらと比べると少なくなっていました。
特に「混合」の市町村では、治安悪化や文化・生活習慣上のトラブル、社会保障費などへの不安が、他の類型よりも強く示されました。塚崎氏は、その背景として、さまざまな在留資格や国籍の外国人がいるため、住民が具体的な外国人像を描きにくく、漠然とした不安が生まれている可能性や、比較的規模の大きな市町村では外国人住民との接点が持ちにくい可能性を指摘されました。
一方、外国人が増加してほしい理由として最も多かったのは「人手不足の解消」でした。次いで、「地域の多様性の向上」「地域のグローバル化」「地域活動の担い手の増加」「税収の増加」「地域人口の増加」が挙げられました。
「専門最多」の市町村では、外国人による人手不足解消への期待が他の類型よりも強く、外国人がもたらす多様性や国際性も前向きに捉えられていました。観光業が地域の主要産業となり、外国人材の存在が地域経済と密接に結びついていることが、肯定的な住民意識につながっていると考えられます。
交流を通じて「地域をともに担うパートナー」へ
住民調査から得られた重要な示唆として、塚崎氏は、外国人との付き合いがあることが受入れ意識に肯定的な影響を与える点を改めて強調されました。
外国人との交流を促進することによって、外国人を治安悪化やトラブルをもたらす抽象的な存在としてではなく、職場や地域社会をともに担うパートナーとして知り、協力的な信頼関係を築くことができます。
ただし、交流の方法は地域の特徴に応じて考える必要があります。「混合」の地域では、さまざまな在留資格や背景を持つ外国人との多様な接点をつくることが必要です。「身分過半」の地域では、外国人住民の同国人ネットワークが強い場合もあるため、自治会活動や地域の支え合いの場を通じて、日本人と外国人が自然に助け合える接点を形成することが重要となります。
また、すべての地域に共通する基盤として、日本語教育を充実させることや、「やさしい日本語」を普及させることの必要性も示されました。
③ 外国人が地方圏に定着するための4つの条件
講演の第3のテーマは、外国人の地方圏への定着です。
特定技能1号の外国人の転職では、地方から都市部への移動が実際に生じており、翌年度から運用開始予定とされた「育成就労」制度において本人の意向による転籍が一定の条件の下で認められることから、地方から都市部への流出がさらに進むのではないかという懸念が紹介されました。
県をまたいで移動した外国人について分析すると、移動前に居住していた県よりも、現在居住している県の賃金水準が高い傾向が国籍を問わず見られました。高い賃金や豊富な雇用機会が、地方から都市部への移動を促す要因になっていると考えられます。
しかし、現在の地域を離れるか、どこへ移動するかという選択は、一人ひとりの職業キャリアとライフ・キャリアに関わる重大な決断です。塚崎氏は、2021年から2026年にかけて、地方圏の外国人雇用企業、人材派遣企業、自治体、監理団体、外国人本人、NPOなどに実施したヒアリング調査から、地方圏への定着に関係する次の4つの要素を示しました。
第1は、能力開発や資格取得ができる環境です。技能実習から特定技能に移行する際に、都市部への転職が可能であったにもかかわらず、現在の企業で働き続けることを選んだ外国人の事例では、企業が資格取得や能力開発、安全衛生教育に力を入れていました。外国人が将来の職業キャリアを見通せることが、定着の重要な条件となっています。
第2は、生活状況への配慮がある環境です。外国人のための寮を整備するだけでなく、経営者や職場の人が食事や買い物などの日常生活を気にかけることが、地域や企業への信頼につながっていました。
第3は、ワーク・ライフ・バランスを実現しやすい環境です。共働きで子どもがいる家庭にとっては、シフト勤務ではなく固定勤務であることや、残業が少ないことが、就業先や居住地を選ぶ重要な条件となっていました。
第4は、安心できる人的ネットワークがある環境です。トラブルや病気の際に間に入ってくれる支援者、日本人と外国人の間をつなぐ職場のリーダー、就職後もフォローしてくれる学校や自治体のネットワークなどが、地域への定着を支えていました。
その具体例として、北海道東川町では、自治体、福祉専門学校、介護施設などが連携し、外国人介護人材の育成と道内施設への就職を支援しています。就職後も専門学校と介護施設が連絡を取り合い、職場でトラブルがあった場合には学校側も関与するなど、継続的なフォローアップが行われています。
塚崎氏は、外国人が地方圏に定着するためには、企業や自治体などが、外国人にとって職業キャリアとライフ・キャリアの将来を見通すことができる、住みやすく働きやすい環境を整えることが重要であるとまとめられました。また、信頼関係に基づく安心な人的ネットワークを形成し、日本人と外国人の双方向の交流を促すことが不可欠であると述べられました。
第2部「自分の立場で何ができるか」を考えるグループワーク
講演後の第2部では、参加者が2班に分かれ、15分間のグループワークを行いました。テーマは、次の問いでした。
外国人が働き続けたい、暮らし続けたいと思える地域にするために、あなたの立場でできることは何でしょうか?
第1グループでは、日常の中でできる小さな行動から、教育・就職支援や情報発信まで、幅広い提案が出されました。
身近な外国人に笑顔で接したり、近所に外国人が住んでいれば挨拶をしたりすることも、接点をつくる第一歩になるという意見がありました。また、専門学校で外国人留学生の就職支援に携わる参加者からは、夜間に工場で働いた後、ほとんど睡眠を取らずに授業へ来る学生がいることや、外国人本人が日本で働くことができても、後から来日した家族が地域になじめず、帰国や離職につながる場合があることなど、外国人留学生の厳しい生活実態が共有されました。
こうした実態を、日本人住民や企業に丁寧に伝えること、在留資格制度について学び、外国人留学生への理解を広げることが、キャリア支援に携わる者としてできることではないかという意見が出されました。
さらに、外国人が地域の日常生活を支えている事実を伝えることも重要であるとの指摘がありました。コンビニエンスストアで販売される商品が深夜に製造されていることや、宅配便が予定どおり届く背景には、夜間に働く外国人労働者の存在があります。こうした具体的で前向きな情報を伝えることによって、外国人に対する漠然とした不安を和らげることができるのではないかという提案でした。
外国人との最初の接点が否定的な情報であったか、肯定的な情報であったかによって、その後の見方が大きく左右される可能性も指摘されました。そのため、外国人の苦労や地域への貢献、能力の高さなどを、実例を通じて伝えていくことが重要であるとまとめられました。
専門学校の立場からは、外国人留学生が地方企業に受け入れられ、気持ちよく働き続けられるよう、就職前の準備と就職後の環境の双方を考える必要があるとの意見がありました。ワーク・ライフ・バランスや人的ネットワークなど、働きやすさを構成する条件は、外国人と日本人で本質的に異なるものではないことも確認されました。
大学院で長年留学生を受け入れてきた参加者からは、かつて外国人が入居できるアパートを探すことが非常に困難だった経験や、その後、留学生の出身国、経済状況、能力、生活様式が多様化してきたことが紹介されました。若者が都市部へ流出し、地域企業が優秀な人材を確保できない地方において、高度な知識や技術を持つ外国人留学生が地域を支える可能性が高まっているとの指摘もありました。
第2グループでは、外国人との交流を促進することについて、異なる角度から意見が交わされました。
交流を重視する立場からは、自分自身が心に余裕を持ち、外国人と自然に仲良くするよう努めること、困ったときに相談できる存在になることが提案されました。
その一方で、地域の側が交流はよいことだと一方的に考え、外国人に地域活動への参加を求めることへの注意も示されました。地方には、祭りや自治会活動への参加、性別による役割分担など、長年続いてきた地域固有の慣習があります。
しかし、それらを当然のものとして外国人住民に押し付けるのではなく、一人ひとりが何を望んでいるのかを丁寧に理解する必要があります。外国人本人が必ずしも積極的な交流を求めているとは限らないという視点も共有されました。
また、共生社会を目指す理念と、国の在留資格制度や外国人政策が、常に一致するとは限らないという問題提起もありました。地域での定着や交流を求めながら、制度上は外国人の生活やキャリアの選択を制約する場合もあります。こうした矛盾を認識するとともに、外国人との交流や外国人の就労によって恩恵を受けている企業、地域、住民が、その意義についてより積極的に声を上げるべきではないかとの意見が示されました。
外国人と地域をつなぐ「ブリッジパーソン」
全体共有を受けて、塚崎氏は、日本で暮らす外国人が急速に増えている一方で、受入れのための制度や地域の体制、人々の意識が十分には整っていないとコメントされました。
外国人に寄り添いながら、日本人と外国人の双方に利益のある関係を築くこと、そして外国人が地域にとって重要な存在であることを具体的に伝えるアプローチが、今後さらに重要になると述べられました。
最後に、諏訪康雄理事長から、ご自身の海外生活の経験を踏まえたコメントがありました。
諏訪理事長は、若い単身者として海外で暮らした場合と、配偶者や子どもを伴って暮らした場合とでは必要となる支援が大きく異なったと振り返りました。単身であれば現地で友人をつくりやすく、比較的自由に行動できますが、家族で暮らす場合には、子どもの病気、保育、ゴミ出し、買い物など、予測できない生活上の課題が数多く生じます。
その際に大きな支えとなったのが、外国人と現地社会をつなぐブリッジパーソンでした。地域の事情を教え、困りごとを調整し、現地住民との間を仲介する人の存在が、家族の生活を支えたといいます。
諏訪理事長は、外国人が安心して働き、暮らし続けられる地域をつくるために、自分に機会があるならば、こうしたブリッジパーソン、すなわち外国人と日本人をつなぐ橋渡し役の一端を担うことが、自らにできることではないかと締めくくりました。
今回のキャリア・コロキアムは、外国人を人手不足を補う労働力としてのみ捉えるのではなく、一人ひとりが将来の職業キャリアとライフ・キャリアを持つ生活者であることを再確認する機会となりました。
地域への定着を支えるためには、賃金や雇用機会だけでなく、能力を高められる仕事、安心できる生活、家族を含めたワーク・ライフ・バランス、相談できる人や場所が必要です。同時に、日本人住民の側も、日常の挨拶、正確な情報発信、地域での自然な接点、相談や仲介を通じて、外国人との信頼関係を築くことが求められます。
日本人と外国人が、地域社会をともに支え合うパートナーとして、互いの意思や生活を尊重しながら協力関係を築いていくことの重要性を、参加者一人ひとりが自らの立場に引きつけて考える勉強会となりました。
次回の第34回キャリア・コロキアムは2026年10月22日前後で調整中とされ、バラン氏を講師として、多様な経験を経て地域創生に関わるようになったキャリアについてお話しいただく予定が紹介されました。

