《諏訪理事長 寄稿》 「コロナとキャリアとテレワーク」

《諏訪理事長寄稿》
「コロナとキャリアとテレワーク」

はじめに

ウィズコロナの時節、皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
新型コロナウイルス感染症で当NPOの通常活動は停止のやむなきになりました。本当に申し訳なくも残念な事態です。

現在、新常態(ニューノーマル)のNPO活動を進めるため、オンライン企画などの準備を進めております。秋口から順次、オンライン企画を提供できるよう鋭意、努力中ですので、いま少しお時間をいただけますようお願いいたします。

1 感染症と労働市場 

それにしましても今回の事態は、中世のペストや結核などの猛威が典型的であった人類と感染症の闘いは、今もってこれほど厳しいものだと痛感させてくれました。人と人との間の隔離策(ソーシャル・ディスタンシング)に頼らざるを得ないのは、100年前のスペイン風邪の時代とまるで変わらない状態です。感染地域の封鎖や中世ベネチアで生み出された検疫体制といった対策が現在も受け継がれ、ワクチンの開発と普及が進むまでの主要施策となっています。

ご存知のとおり、中世ヨーロッパを襲ったペスト感染により人口の3分の1ほどが失われた時、都市から地方の村へと避難した人たちが大勢いました。それを背景にボッカチオ「デカメロン」のような文芸作品も生まれましたが、今回も、都会から別荘地に移動した人がいて地方の自治体は戦々恐々となったようです。

この事態に対しては、多数の感染症関連の論文や対策論が生まれています。ひょっとしたら優れた文学作品なども出てくるのかもしれません。

労働関係をみますと、中世ヨーロッパのペスト禍により多数の人口が失われたことで当時、極端な人手不足が生じ、賃金などの報酬水準が大きく跳ね上がったと記録されています。はたして現下の経済活動回復期にはどうなることでしょうか。むしろ人工知能(AI)やロボットの活用が促進されるのでしょうか。

いよいよ人手に頼ったアナログ業務処理から、ビフォアー・コロナ期には掛け声ばかりが高かったデジタルトランスフォーメーション(DX)が一気に加速し、産業構造や就業形態に変化が生まれてくるのではないかという観測も、しきりにいわれています。

そうなると、ネットなどでよく揶揄される「昭和おじさん」を沢山かかえた日本型雇用慣行はどうなることでしょうか。日本では企業がほしがる44歳以下の就業者数が半分を割ってきたなか、高齢者雇用安定法が改正され、従来の65歳までの「雇用継続」義務に加えて、65歳から70歳までの「就業継続」の努力義務が定められました。

一般的な傾向として、マーケットでは沢山あるものは安価になり、希少なものは高価になりますから、今後とも中高年の市場価格は低下傾向となり、若手のそれは上昇傾向になることが予想されます。「働かないおじさん」批判がこれほど噴出するのも、希少化してきた若手のバーゲニングパワーが高まっていることも影響しているのではないかと思われます。

エン・ジャパンの社内失業実態調査によると、2018-19年調査(有効回答801社)では全体の6%の企業に「社内失業状態の社員」がおり、とりわけ社員300~999人規模では16%もの企業にいるとなっていました。これが2020年2月から3月にかけての調査(有効回答381社)では、全体で9%、300~999人規模では18%と上昇しました。社内失業状態は、回答の多かった前者の調査によると、年代は「50代」(57%)、役職は「一般社員クラス」(80%)、職種は「企画・事務職(経営企画、広報、人事、事務 他)」(46%)に多く、「働かないおじさん」層とほぼ重なっているようです。

2 中高年とテレワーク

ところで、昭和おじさんどころか昭和じいさんの私は、1980年代前半に大学のゼミナールでアルビン・トフラー「第三の波」を輪読し、そこに出てきた「在宅勤務」を学生たちと調査したことがあります。夏休みの宿題でそれぞれの地域の自治体、商工会議所、企業などを足で回って、テレワークについてレポートしてもらいました。

秋口に報告を聞くと、どこでも「えっ、何それ?」とか「そんなの聞いたことないなぁ」など、とても怪訝な顔をされ、ヒアリング調査は難航したようでした。欧米では1970年代からちらほら出現していたけれども、40年近く前の日本では、現場を預かる人びとはテレワークをまるで別世界の夢物語のように思ったようでした。

大学教員の私は、以前から週に何日かは自宅で仕事をしていましたから、その後もテレワークにはいたく関心をそそられました。当初はアナログ時代の在宅勤務者でしたが、やがてパソコン、ファックス、コピー機などを仕事部屋に備えた本格的なテレワーク実践者となり、調査研究面でも日本の初期テレワーク研究者の一人となって、今に至っています。

とはいえ日本社会のテレワークへの関心は、おどろくほどゆっくりとしか進みませんでした。たとえば、バブル崩壊後の平成初期(1994年11月)に日本経済新聞が平均44歳の大手企業課長さんにテレワークについて訊いたところ、「公私のけじめで家庭に仕事を持ち込みたくない」が回答の1位(35.8%)、「家ではメリハリがつかず仕事の質が低下する」(25.7%)、「会社にいないと情報が入らず不安だ」(17.4%)などの否定的な反応ばかりでした(ただし、3割ほどの人(29.4%)は「将来増える」との見通しをもっていましたが)。

今回の在宅勤務の要請に対して、企業経営者や管理職の少なからぬ人びとがテレワークに対して示した戸惑いの反応も、26年前のそれとそっくりでした。つまり4半世紀たった今も「昭和おじさん」現象は健在のようです。

当時の学生たちのテレワークへの反応はどうだったでしょうか。ゼミで1997年に東京周辺大学の学生1217人に調査をしたところ、育児中の女性が仕事をする条件として「在宅勤務の利用」を挙げた学生はわずか5.7%でした(男子学生6.6%、女子学生4.6%)。今や「平成おじさん・おばさん」になっているだろう、かつての若者たち(平均20歳くらいだったので現在40代前半の中堅)は、そのころからずっとテレワークのメリットが腑に落ちないままできていたのかもしれません。

中高年がテレワークに違和感を示した背景には、何やかやいわれながらも根幹が大きく変わらなかった日本型雇用慣行の存在があったと思われます。会社に出勤し、職場に集合し、互いの顔を見合わせながら、職場集団単位で臨機応変に業務処理をし、そのプロセス観察が人事評価に大きく響くならば、個人ごとの仕事の切り出しと成果評価がなされないままですと、在宅勤務でプロセスが評価されづらいという事態は、心配のたねになっても不思議ではありません。

それに加えて、PISAテストという15歳児の学力テストで知られているOECD(経済協力開発機構)は大人の能力テスト(PIAAC)もしており、日本の中高年のIT能力の低さも問題となった事情があります。

直近の2018年調査によると、読解力や数的思考能力の年代別対比では60歳以上でもピーク年代(25~29歳)の1割程度しか得点が低くなっていない(つまり一般的知的能力は加齢でも1割くらいしか下がっていない)のに対して、「IT応用力」のテスト結果では、25~34歳の年代層について16.0%だった「高水準」得点者が55~65歳層ではわずか1.3%しかいなくなり、「中水準」のそれも37.7%に対して8.6%だけなのです。そのうえ、55~65歳層には「低水準かそれ以下」の得点の人が25.6%もいて、さらに40.9%もが「経験なし・不合格」と位置づけられ、しかも23.6%は「検査回避・不明」という、惨憺たるありさまでした。

職場のリーダー格、先輩格がIT応用能力にこれほど問題をかかえている以上、現場のDXに対する抵抗はさぞや強固なことでしょう。誰だって、自分の習熟してきたアナログ経験が評価されづらくなり、これまで十分に教育訓練されていないことから苦手意識の強いIT業務処理能力のほうが脚光をあびるなんて考えれば、身の毛もよだちます。

逆に、それをもどかしく感じる若手は、エクセル表計算のカンタンな関数さえも使えず、なんと電卓で計算した結果を手入力しているような中高年に対して、「働かない」どころか「働けない」おじさんだとして非難をしているわけですから、能力不足の中高年はこれに文句をいえません。

もちろん中高年にIT拒否感が強くなっているのは、教育訓練の機会をその年代層に怠ってきたツケが回ってきたこともあるでしょうし、年代ごとの学歴水準の差異(シニア層には大卒・大学院卒が少ない)や業務内容の違い(シニア層には現場作業などに従事する人の比率が高い)も影響していることと推察されますが、ともあれ結果として、今回の「強制」在宅勤務により、時代の流れへの向き合い方の問題点がくっきりと洗い出されてしまったようです。

テレワークをめぐる不満として、ビデオ会議ひとつにまともに対応できないとか、職場と同じように管理しようとするため四六時中、PCカメラをONにしておけといってビッグブラザー(ジョージ・オーウェルの小説「1984年」)みたいなことをやりたがるとか、と中高年管理職への批判が若手テレワーカーから出されています。

3 コロナとテレワーク

いうまでもなく情報通信技術(ICT)を用いた分散型の遠隔就業であるテレワーク、リモートワークは、就業方式、業務処理手法のひとつにほかなりません。それに向いている業界、企業、職場、職種、作業もあれば、そうでないものもあります。個別作業的としての分散就業で生産性を上げる人もいれば、そうでない人もいます。在宅就業に向いた住宅・家族構成の人もいれば、そうでない人もいます。

ですから多くの場合、何もかもテレワークだけで処理しようとするのには無理があります。テレワーク誕生の当初より、ごく一部に完全な分散型遠隔就業だけで企業経営をする例外的な事例もありました(たとえば全国に散在するテレワーク形式をとった1993年創業のパステルという会社など)が、先行例のほとんどは通勤型の集団作業方式と分散型の個別作業方式の組み合わせによるものでした。つまり両者の組み合わせで、持続的かつ全体的に生産性がより上がる方向が模索されてきました。

ところが今回の非常に広範囲なテレワーク導入は、パンデミック対策の緊急避難として、仕事の向き不向きや、テレワークの装備やインフラ整備、分散型遠隔就業への組織と個人の習熟具合いなどをかなり無視した形で、短期間に否応なく進められました。

たとえば、パーソル総合研究所の調査によると、対象となった正社員2万人余は本年3月9日から15日の間にテレワークを実施した割合が13.2%にすぎなかったものが、4月10日から12日の間では27.9%と2倍以上になり、その結果、初めて現在の会社でテレワークを経験した人が4月調査時点では3分の2以上(68.7%)ともなっていました。

同調査によると、会社からテレワークを推奨または命令された率は、全国で3月22.1%、4月40.7%でした(地域最高の東京が3月で38.2%、4月で64.7%)。また、LINEリサーチの4月調査では、在宅勤務を推奨または義務とされていたのが3分の1以上(35%)でした。日本生産性本部の5月調査でも、在宅勤務の実施率は約3割(29.0%)でした。さらに、東京商工会議所の3月調査では、テレワーク実施企業は4社に1社以上(26.0%)、従業員300人以上の企業では過半数(57.1%)、同5月調査ではテレワーク実施企業は3社に2社以上(67.3%)、300人以上企業では9割(90.0%)にも達しました。

こうした動向をほんの4年前と比べてみましょう。総務省調査(平成28[2016]年通信利用動向調査)によると、企業でテレワークを導入しているのは従業員100人以上企業でも1割強(13.3%)にすぎず、しかも導入企業のうち、テレワークを実際に利用している従業員の割合が5%未満(従業員20人に1人)というのが最多(45.4%)でした。これを踏まえて2017年に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」では、2020年にはテレワーク導入企業が34.5%にするとうたっていましたが、多くの人はとても無理だろうとみていました。ところが、奇しくも感染症対策で一時的にせよ、この数字がほぼ達成されてしまったようです。

4 アフターコロナとテレワーク

今回の急激な変化を「テレワークとウェブ会議など、10年分の変革が2カ月で起きた感じだ。働き方や組織のあり方を急速に変えた」(守島基博・学習院大学教授の日経産業新聞2020年7月10日インタビュー記事)とみる有力な見解があります。

業界の横並びで出向いての商談とか電話や手紙やファックスなどを利用した方式が主流であったり、ハンコや稟議書といったアナログ慣行が根強かったり、中高年をはじめとしたDX抵抗勢力が年功序列で組織の上位にいたりなどして、テレワークの導入が他の先進国などに比して遅れていただけに、「有無をいわせず在宅勤務」という事態のインパクトは小さくなかったと思われます。ICTによる業務処理のシステムやスキルなどを「食わず嫌い」していた組織や人びとに、思わぬ実証実験参加を強いたようなものでした。

長年テレワーク普及の遅々たるあゆみを観察してきたオールド研究者の私は、今回のテレワーク経験をめぐるメリット・デメリット両論の大部分はかねて指摘されてきたものばかりと感じましたが、ビデオ会議の普及をめぐる議論は目新しかったですし、さらに日本型雇用慣行の見直し論と重なった動きは注目されました。

周知のとおり、日立製作所、富士通、資生堂、カルビーなどの会社が、アフターコロナの時期にも、テレワークを積極的に活用する方針を打ち出しています。

とりわけ経団連会長を出している日立製作所は、かねてよりメンバーシップ型の雇用慣行を離れジョブ型を導入する方向を目指そうとし、日本型雇用慣行を支える新卒一括採用の見直しなどにも積極的でした。

ベンチャービジネス系の企業ばかりでなく、伝統のある錚々たる大企業がテレワークを本格的に取り入れようとする動きは、底流として日本型雇用慣行を揺さぶっていくことでしょう。個々人の職務内容を明確化、専門化するジョブ型雇用は、中高年一般職のモチベーション維持にも向いた側面があり、また分散型遠隔就業であるテレワークともなじみやすく、ジョブ型志向とテレワーク活用は両輪のように進む可能性があります。

とはいえ、多様な人びとが、同じ時間に、物理的に同一の空間にいて、表情やしぐさなどのボディーランゲージを含めた奥行きのある意見交換や雑談などをする、リアルのコミュニケーションの重要性を再認識した人がとても多かったように、テレワークといったバーチャルで分散型の個人作業に向いた就業方式には、その反面としての弱みが多々あります。

したがって流れとしては、リアルの集合形式作業、対面型作業と、バーチャルな分散形式作業、個別型作業とを、組み合わせながら、最適な働き方を探っていく方向が、手探りされていくことでしょう。

同様に、日本型雇用慣行についても、教育訓練制度、労働市場、人びとの意識などのインフラストラクチャーの変化をにらみつつ、メンバーシップ型とジョブ型との併用や、中途採用と新卒採用との併存などが続くことと思われます。

とはいえ、従来型が幅を利かせすぎると、新規型がなかなか定着しないのが世の常です。1980年代にお先棒担ぎのように在宅勤務を導入したある企業では、実験的に「1年間の在宅勤務を命じる」といわれた管理職はまるで「出社に及ばず」の自宅謹慎にあったような気になったそうです。早くから在宅勤務制度を取り入れた別の企業でも、その利用はすこぶる限られていました。

ある製造業の会社では、一定期間の在宅勤務を認める制度を導入しましたが、その間の人事評価をどうするかと訊いたところ、人事担当者が最低ランクにすると答えたので、それでは個人や家庭の都合で出勤がむずかしい人以外は利用しないだろうなぁと感じたことがありました。

このように出勤勤務と在宅勤務の併用方式で、人事評価制度が今のようなまま変わりませんと、心理学を持ちだすまでもなく、出勤して、上司(一次査定者など)と常に顔を合わせ、会話をし、飲み会などをする人のほうが親密度を高め、出社の少ない在宅勤務者よりも圧倒的に有利となる傾向となります。そうなると、社員の人情としては、いつしかテレワークは限定的な扱いとなり、出勤勤務が主流に戻っていくこととなりそうです。

5 アフターコロナのキャリア予測

では、アフターコロナで何もかもが変わったように感じたが、実は何も変わらなかったとなるのでしょうか。キャリアの視点からアフターコロナ時代を考えてみます。

コロナ禍のような大きな現象は、とりわけ若い世代に影響を与えます。通勤にとられていた時間とエネルギーが浮く在宅勤務や巣ごもりで、個人生活・家庭生活の見直しが進みました。男性も家事や育児に取り組む人が増え、ホームセンターは込み合い、家電、インテリア用品、木工品などが売れ、海外では木材価格が上がっているそうです。

ワーク・ライフ・バランス意識が高まり、コロナ後も在宅勤務を継続したいとする要望はとても強いです。ステイホーム期間中のテレワーク割合が3人に1人(33.5%)だった子育て世帯では、それらのテレワークをした人の9割近く(88.8%)が今後の継続を望んでいました(明治安田生命「コロナ禍における子育て世帯への緊急アンケート調査」2020年)。

就業手段としてのテレワークの効用を労使双方ともに体験できたため、テレワークを原則的な勤務形態にする会社こそそれほど多くないにしても、可能なかぎり積極的に活用しようとしていこうとする会社は確実に増えました。

そうなると、テレワークの個別作業とオフィスの共同作業をより円滑に進めるために、個々人の守備領域を明確にし、その進捗具合いを確認しつつ、全体の共同作業を設ける方向が探られていくことでしょう。

メンバーシップ型の組織文化が強い日本では何かにつけて集合作業を好みますが、ジョブ型の組織文化である欧米では個別作業と集合作業との組み合わせが好まれます。たとえば、日米双方の大学でオーケストラ部の活動を経験すると、日本では絶えず部室に集まってだべったり、一緒に練習したりしているが、米国では授業の合間に各パーツの練習を個々人が自分にとって都合のよい時間と場所で行い、土曜日の午後などに集合して音合わせをする方式をとりつつ進めるといいます。結果的に、演奏水準は日本と大差ないながらも、日本よりもずっと多い年間回数の公演を行っているそうです。

そうした組織文化が企業運営にも反映されているとすると、メンバーシップ型とジョブ型の違いは、理念型ではまるで違ったようにみえましょうが、実際には企業ごとの状況に応じて、集合作業が向いた課業(タスク)には集合方式(出勤勤務など)で、個別作業が向いたタスクには個別方式(テレワークなど)で対処し、両者の組み合わせ(統合)において他社よりも優位となるように工夫することが課題となります。

各社の人的資源管理においても、希少となっている若い子育て共働き世代が多ければ、ワーク・ライフ・バランスが調整しやすいテレワーク多用の方向を目指すことで、より有能で長く働いてもらえそうな人材を確保しようとするでしょう。逆に、中高年を中心にアナログ的な業務や対面型のサービス提供、共同作業を目指すならば、従来どおりか、サテライトオフィスのような職住近接型を志向することもあるでしょう。

今回の壮大な社会的実証実験を経ることでアフターコロナ期には、より無理なく生産性が向上し、付加価値が高まり、同時に働く人びとの仕事熱意(エンゲージメント)も高まり、持続可能なワーク・ライフ・バランスが継続するような組み合わせのシステムが、全社会的に試行錯誤されていくと予測されます。

おわりに

これからのキャリア展開は、こうしたニューノーマルを織り込みながら、見通す必要がありましょう。

急に個別作業領域が広がり、各人の自律的な管理能力が問われた今回のテレワーク実験では、従来から個人の時間管理スキルや作業管理スキルが身についていた人は無理なく対応できたようですが、指示待ちだったり、状況依存型で作業を進めたりしていた人が戸惑い、成果が上がりづらかったようです。

自分なりのキャリア意識を育ててきた人は水を得た魚のように生き生きと働いたが、そうでなかった人は生活時間と仕事時間の切り分けに苦労したり、仕事のノリが出勤勤務のようには進まなかったりした様子が、突如として山のように出現したテレワーク関連のネット記事・発言からも読みとれます。

私たちのキャリア権の提唱は、二度とない人生におけるキャリア展開を、個人も社会も、どう充実させていくかを考え、制度設計していくうえで欠かせないものだと、あらためて実感いたしております。

当NPOでは今後とも、キャリア尊重がもつ意味を考え続ける企画を進めていきますので、皆様のご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。