《リレーエッセイ7》 当NPO会員 北川 佳寿美 様

《リレーエッセイ7》「キャリア選択の意味を言語化すること」
認定NPO法人 キャリア権推進ネットワーク会員 北川 佳寿美

皆さんが人生で大切にしたい価値観は何ですか?

バブル崩壊後の就職氷河期にかろうじて正社員での社会人スタートを切ってから、アルバイト、契約社員、派遣社員、社会人学生を何度か行き来しながら、現在はフリーランスとして働いています。
流通・小売業界で最初のキャリアを築き、その後は精神科領域の専門職として組織の中で働いてきました。
その過程では、条件の良い正社員で入った会社を辞めてアルバイトとして転職したり、転職では厳しい異業種にキャリア変更をしたりと、周囲からはキャリアダウンに見える選択もしています。
自分の中では納得したキャリア選択にも関わらず、その意味を周囲にうまく伝えることが出来ず、もどかしさを感じていた時期もありました。

組織人からフリーランスになる前に一番時間を使ったことは、これまでのキャリア選択の意味を言語化することでした。
組織人のときは、自分のキャリア選択を言語化する機会といえば転職時の面接だけでした。
面接のためではなく、自分自身が本当に望んでいる選択をしているかを確認するために、キャリア選択の意味を言語化する機会。それは社会人同士の学びの場にありました。
「働く」を様々な視点から研究する社会人大学院の仲間との積み重ねと研ぎ澄ましの学びは、自分がどんな働き方をしたいのか、社会の中でどんな役割を担いたいのか、 そして、人生をどう重ねていきたいのかという自分が大切にしたい価値観を考える時間となりました。
自分の人生に対する思いや信念を本音で語る仲間との学びの時間は、図らずも自分のキャリア選択の意味を言語化する貴重な機会になっていたのです。

キャリア選択の意味を言語化することは、働くことを含めた人生の全体の中で大切にしたい価値観を明確にしていくプロセスそのものだと感じます。
仕事柄、カウンセリングの中でクライアントのこれまでのキャリアをお聴きする機会があります。
「自分のキャリアなんてたいしたことない」「語れるほどのキャリアはない」と語るクライアントも少なくありません。
しかし、自分のキャリア選択の意味を言語化する機会を得ることで、自分の望む働き方や大切にしたい価値観が明確になり、これまでのキャリアに自信を持てるクライアントも多いのです。
私自身、周囲にうまく伝えることが出来なかったもどかしさがあったからこそ、学びへと誘われ、今の自分のプレゼンスを支えているように思えてなりません。

<プロフィール>
精神保健福祉士
国家資格キャリアコンサルタント
認定NPO法人 キャリア権推進ネットワーク会員