《リレーエッセイ9》 当NPO会員・広報副部長 川野 晋太郎 様

《リレーエッセイ9》「自ら求める権利と責任と」
認定NPO法人 キャリア権推進ネットワーク会員・広報副部長 川野晋太郎

◆自ら求める権利と責任

昨年のプロ野球シーズンが終わった時、広島の丸選手が巨人に移籍することを決めました。過去巨人に移籍してきた大物選手は数多く、活躍した選手もいれば苦労した選手もいます。
本人の移籍理由も周囲からの意見も様々あるでしょうが、自分の持てる力が発揮されている状態を求めて、さらなる成長が可能な環境を模索していく事は、自ら求める権利があります。
逆を言えば、力が発揮できていないのであれば、前向きに要因を分析し、自分の能力やスキルが通用するレベルなのかを確認することは重要な事であり自分の責任でもあるでしょう。
世の中では人生100年時代と言われ、一方でAIの登場もあり、自分の仕事がいつまでも同じことを同じ会社で出来る保障はなさそうです。

◆「日本の流動性」

日本の雇用の「流動性」(転職などを通じて仕事を変わる事)は外国に比べて低いといわれますが、その事に問題はあるのでしょうか?
これまで日本では企業内(内部労働市場)での流動性は大変高く、終身雇用、つまり雇用保障を前提に、企業が責任を持ち配置転換により能力の発揮や事業環境の変化に対応してきたと言えます。
しかし、成長を期待される産業で人手が不足する時代には、企業内だけでは限界があり外部労働市場での流動性も必要となります。また高齢者雇用促進法により、自らの意思表示で、定年後もひとつの会社で勤め上げる事も可能ですが、ある意識調査では「自分の働きがいを求めて」「キャリアアップのために」を考えて、いつかは転職を考えているという人は、ミドルでさえ半数を超えてきているそうです。長い職業生活を考えれば当然の意識だと思います。

◆「提言」他流試合のすすめ

私は、工学部出身ですが、自らの意思で文系就職をしました。「専門を捨てるつもりか!」と担当教授にも叱られたものですが、自らの持ち味とマッチした仕事で頑張りたいと覚悟した記憶は今でも覚えています。
その後転職支援の仕事では、多くの方のキャリアのお話を伺い、転職に立ち会ってきた事から言えるのは、世の中には面白い仕事が多い事と、働く人の「成長意欲」と「高いスキルや知見」そして「自ら意志を持つ」は、いくつになっても財産だということです。なにより仕事で持てる力を発揮できていることは、本人はもちろん、企業にも、また家族や周囲にも「喜び」があるように感じます。
会社勤めで忙しく働いていると、目の前の事をやり遂げる事に全力を挙げ、考える時間も、他で通用するのかも見当がつかず、ついつい現状維持が長くなってしまいます。
一見それは効率的ですが、長い目で見た場合はリスクもある時代です。本業以外で自らの能力を活かせる仕事や職場との出会い、自分の習得スキルの汎用性を知っておくことは、これからは欠かせない事でしょう。
自らの持てる力を発揮させる権利と責任は本人にもあり、発揮できた仕事や場所の軌跡がキャリアというものかもしれません。企業も本人もまた社会も、相互に支援することが求められる時代ではないでしょうか?

※プロフィール
1986年九州大学工学部卒業後、リクルートに就職。
人事、経営企画部、社長室、新規事業開発室、営業、編集、広報など経験後、転職支援事業で長年務め、現在は日本人材紹介事業協会事務局長。
また認定NPO法人キャリア権推進ネットワークの広報副部長。